NOKOTO

本当にきれいなもの

奥村 奈穂子

自分のことをお人形さんみたいと言ってくれた女の子がいた。

「かわいい、ぬいぐるみ、みたい」

優しい声で、自分と歳の変わらないその子はいつも微笑んでくれた。制服のリボンすら満足に結べない私に、「○○はね、いもうとがほしかったの」と話しながら私のために膝を折って。

 

「おいで」

 

抱き締められると甘い飴の匂いがした。

頬に当てられた手は幼い少女の手と思えないほどささくれ立ち、分厚く、温かった。

「はたらきもの、の、てだねぇ」と誰かが言っていたのを思い出す。

 

彼女の手の感覚に私が瞬きをして、それから微笑み返すと、恥ずかしそうに手を下ろした。

自分のあかぎれをした手を恥じるように、後ろに隠して。

「××ちゃんの、ては、きれいだね」

眉をさげて微笑んだ。

 

もしも。

 

今の私を彼女が見たら、変わらずに「かわいい」と言ってくれるのだろうか。

コンプレックスにまみれて、何も見えなくなってしまった私の、この泥をなんてことないように払って、甘い飴をくれるのだろうか。

少し肌寒い、冬の日のこと。

彼女によく似た女の人を見かけてこんなことを思った。

陽だまりのような眩しい面影に、私はまた目を伏せてしまったけれど。


奥村 奈穂子