NOKOTO

居心地の良さはヒトによって違う

中山 雄治

先日、印象に残る出来事があった。

普段は小売り業に勤しむ私だが、とても忙しい時間帯に(厄介な)お客様につかまった。以前商品不良でご迷惑をおかけしたお客様だった。車いすに乗ったそのお客様は私を見つけるなり呼び止め、商品説明や金額、どれを何個買ったら何円になるかを聞いてきた。値引きを迫られたり何度も商品説明や金額について同じことを聞いてきたりした。正直私はめんどくさかった。けれども自分たちにとって大事なお客様のひとりだから、できる最大限の優しさと誠意を見せた。そうするとそのお客様は私のことを気に入り、また私宛に来店すると言ってくれた。

 

自分にとって居心地が良い場所とは

 

私からすれば、非常にめんどくさい相手であり、普段であれば絶対に関わらない相手だ。しかしそのお客様からすれば、私は非常に優しく、何も嫌がらずに接してくれる関わりやすい相手だ。

このことに私はすごく違和感を覚えた。

「居心地の良い居場所をつくりたい」というのが私のモットーだが、自分が提供する居心地の良い場所は、自分が決して好きではないヒトが集まる空間になってしまうのではないか、と感じたのだ。

その場に集まる人が居心地の良いと感じる空間にするのはもちろんのことだが、それを提供する自分自身の居心地がよくないと本当の意味で「居心地の良い居場所をつくる」ことにはならないんじゃないか、と考えていた。

 

様々な視点を持つ

 

そんな折、高校時代の同級生と再会しお互いの近況報告をし合う機会があった。

その友達にこの話を相談したところ、「固定概念に縛られずにもっといろんな方向から考えてみたらいいんじゃない」とアドバイスされた。自分の視点、そのお客様の視点、周りで働くメンバー、他のお客様の視点、上司、または、それぞれの立場を越えて、個人個人の考え方や感じ方、それぞれに違いがある。だからもっと多方面から物事を考えて行動できるようになれば、いろんな人の気持ちがわかるんじゃないかなって。そうすれば居心地の良い空間をつくることにもつながるし、絶対に将来の糧になるんじゃないかなって。

 

ひとりひとりちがう

 

正直この話を聞いたとき、自分の視野がいかに狭くなっていたかを思い知らされた。

一言に居心地の良い場所と言っても、それはヒトによって違う。田舎暮らしが落ち着く人もいれば、都会のほうが安心できる人もいる。和室やコテージだと深い話ができる人もいれば、クラブやゲーセンのほうが本音を打ち明けられる人もいる。そんなことも考えずに自分がただ居心地がよいだろうと思う空間を想像しては、なかなかその実現に身を投じず、前に進まない自分に焦りや苛立ちを感じていた。けれども、「居心地の良い居場所を作る」ことの実現はそんな簡単でもないし、単純でもない。たとえインテリアや組織開発の知識や能力を身につけたとしても、たくさんの人に深く関わるという経験をしていなければその効力をうまく果たせない。

 

だから少しだけ前へ

今日から次のステップへ踏み出そう。少しづつ一歩ずつでいいから。目の前の仕事に忙殺されるのではなく、目の前の仕事に小さな意味を見いだしていこう。お客様との関わりは作業ではなく、いち人間との関わりなんだ。従業員同士のコミュニケーションも、意思疎通することの大切な要素なんだ。一つずつ一つずつ、自分の実現したい未来に向けて。

 

今は学びを深める時期なんだ。

 

 

 


中山 雄治